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9歳の壁 10歳の壁 夏見台幼稚園 千葉県船橋市

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2.「思考力獲得の道すじ」とは?

 ところで先に触れましたNHK「クローズアップ現代」の中で、全国からの見学が引きも切らないというある小学校の取り組みが紹介されていました。

「227÷3」という「余りのある割り算」

の理解に苦しむ子どもたちの姿が映し出されました。まず、計算の得意な子どもが、黒板にすらすらと計算式を書きました。答えは「75あまり2」で正解です。 
 
 

 しかしなぜこれで正解なのか、と先生が質問を投げかけました。誰も答えることができません。それを解決するために先生が用意したのは227個のキャラメル。10個入りのキャラメルの箱が22箱、これで220個。そしてバラのキャラメル7個です。まずは箱に入った10個ずつを3つのお皿に分けて、バラの7個もそれぞれお皿に分けます。余りは2個でした。

 

 抽象的に考えるには、具体的な体験やモノをベースに考えることが鍵になる。こうしたことが明確になった授業でした。どうでしょうか?これは遊びそのものではないでしょうか!私たちは手を使って考えることの大切さを日常忘れています。もっと子どもたちに手を使わせて、その思考力の土台を築いてあげたいものです。
 
 

 いきなりですが「愛」とは何か?とんでもないテーマですが、ご容赦ください。私たちは「愛」という抽象概念を理解することができます。説明することもできます。「愛」を説明する具体的な言葉を知っていますし、人を愛したり愛されたりした経験があります。その逆の場合も(それも1つの経験となるわけですが)。

 そんな具体的な体験が、「愛」という抽象的な概念を理解する土台になります。反対にいえば、愛の体験がない、愛を説明する具体的な言葉を持っていないと、「愛とは何か?」という問いには答えられないでしょう。

 つまり抽象的な概念を理解するには3つのステップが必要になります。それが以下に示した「思考力獲得の道すじ」です。

 
 
 まずは@身体感覚。皮膚感覚というか、まずは身体で体験する。赤ちゃんはなんでも触ろうとします。あるいは口に運ぶ。実はそうしないとモノが認識できないといいます。これが言葉を獲得する前の段階です。

 続いてはモノを介して具体的に考えること。生後1年たって言葉を獲得すると、いちいち触らなくてもモノを認識できます。「あ」でも「ば」でも、名前をつければいいのです。

 そうして年中~年長くらいでしょうか。子どもが散歩しているとスズメが見えます。カラスも飛んでいます。

 

 ひとつひとつは認識できます。しかし当然ながら
「間の関係」は目に見えません。「鳥」「鳥類」という抽象概念です。そのためには「似たものを見つける力」が必要です。羽がある、くちばしがある、足が二本、飛ぶ…。こうして次の段階、抽象的思考が成立するのです。

※ちなみに「似たものを見つける力」はごっこ遊び(象徴遊び)の中で育まれます。

 こうした積み上げが「9歳の壁」クリアのためのステップになります。そしてその土台を築く役割を担うのは、私たち幼児教育に携わる人間です。

子どもにはなぜ遊びが必要なのか?
なぜ豊富なおもちゃが必要なのか?
なぜさまざまな体験が必要なのか?


 以上でご納得いただけたでしょうか?それは子どもを賢くするためです。物事を認識する力、文字や数など抽象的なシンボルを扱う思考力を養うためです。しかも遊びは主体的な活動です。自ら進んで取り組むことで「意欲」も育まれます。すばらしいのです。遊びは!
 
 この順序を飛び越してあせって詰め込むとどうなるか?中にはすばらしく抽象思考が得意なお子さんがいるかもしれませんが、下の図のように土台のない山はもろく崩れてしまいます。

 

 今、9歳の壁の問題がクローズアップされてきたのは、まさにその前段階である身体感覚やおもちゃなどの「モノ」を介した活動の貧しさにこそ、その原因があると私は訴えたいのです。

 子どもたちが安心して遊べる場所が減少し、身体を動かす機会も減っています。興味関心を上手に刺激するテレビ番組やネットも、子どもを釘付けにします。

 おまけに、日本のおもちゃは電動のものが多いですね。子どもが主体的に働きかけるおもちゃではなく、極めて優秀なエンジニアが子どもの心理を研究し尽くして開発したおもちゃ。視覚や聴覚へ強く訴求するようにプログラミングされたおもちゃ。しかしそうしたものよりも、素朴なパズルや積み木のようなおもちゃを与えたいと私たちは思います。子どもたちの自由な発想や想像力が広がるおもちゃを。 

 

 こうした「拡散的思考」でのびのびと多様な答え・アイデアを追い求めることができるのは幼児期の限られた時期だけです。学校教育ではどちらかというと集中的思考が求められます。重要なことは1つの答えを見つけだすことですから。

(※最近は「アクティブ・ラーニング」とかで変わりつつありますが)

 しかし社会に出ると違います。答えは1つじゃない。多様な人生があり、多様なアイデアで勝負することが可能です。だからこそ、私たちは学校に入る前の幼児期に豊富な遊びの体験を子どもたちに思いっきり味わってほしいと思います。

 夏見台幼稚園・保育園で行われる室内遊びは子どもの発達段階に合わせ系統だった組み立てになっています。頭だけ賢くなってもそこに意欲が伴っていなければ、せっかくの能力が空回りです。「意欲と賢さ」。それが夏見台幼稚園の遊びです。

【2つのポイント】
1.発達段階に合わせた遊び
2.系統だった遊び




以下のページもどうぞ

1.「9歳の壁」とは

2.思考力獲得の道すじ

3.子どもを賢くする4つの遊び

4.「ことば」と「遊び」の関係

5.手先と言葉と脳の関係

6.「絵本」は「生きる力」を育む!

7.「模倣」が意味するもの

8.ヨーロッパの幼児教育の歴史

 


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