「楽しい!うれしい!やってみたい!」という当園の教育目標の背景にある考え方を、よくいただくご質問の形でまとめました。ほめ方・叱り方から、結果とプロセスの捉え方まで扱っています。
Q子どもは「ほめて」育てるべき?「叱って」育てるべき?
Aスタンフォード大学のキャロル・ドゥエックの研究によれば、「能力」をほめられた子どもは失敗を恐れて簡単な問題ばかり選ぶようになり、「努力」をほめられた子どもは難しい問題にも挑戦し、成績も伸びました。しつけの場面でも同様に、「人格」ではなく「行動」を叱ることが大切です。「ほめる」よりも「認める」という姿勢が、子どもの挑戦する力を育てます。
出典:04号Q子どもの自律性・意欲はどう育つ?
Aエリクソンの発達理論によれば、乳児期の「基本的信頼感」を土台に、幼児期には「自律性」という課題が現れます。大人がブレーキをかけ続けるのではなく、子ども自身に「できる・できない」を判断させることが大切です。自律性を育むことの本質は、外の評価に頼らず「幸せの基準を自分自身で作ること」だと当園は考えています。
出典:11号Q「知力」とは何?遊びとの関係は?
A当園では知力を「似たものを見つける力」と説明しています。子どもは最初、見た目の類似性で「似たもの」を判断しますが、成長するにつれて「鳥」のような目に見えない上位概念(関係性)を認識できるようになります。この力はごっこ遊びを通して育まれ、模倣を徹底することの先に、その子なりの独創性が見えてきます。
出典:17号Qおもちゃはなぜ大切?「自己原因性感覚」とやる気の関係は?
A赤ちゃんが床をたたいて音が鳴ることに驚くように、人間には「自分が変化の原因になりたい」という根源的な欲求(自己原因性感覚)があります。犬を使った実験では、自分の意思で電気ショックを止められなかった個体が無気力になる「学習性無力感」が確認されています。おもちゃは、子どもがこの感覚を安全に満たすための大切な道具です。
出典:18号Qほめ方で子どもの挑戦意欲は変わる?
Aドゥエックの実験に加え、大リーグに挑戦した元プロ野球選手のエピソードも参考になります。結果ばかりを気にすると不安がつきまとい、実力を発揮できません。「能力・結果」ではなく「努力・プロセス」に焦点を当てたほめ方・関わり方をすることで、子どもは新しい問題にも粘り強く挑戦するようになります。
出典:19号・44号Q子どもが夢中になる「フロー」状態とは?
A心理学者チクセントミハイの研究によれば、人が最も充実感を得られるのは、能力と挑戦のバランスが取れた「五分五分」の状態のときです。簡単すぎれば飽き、難しすぎれば不安になります。この「フロー(ゾーン)」に入る経験は、大リーグ選手のメンタルコントロールにも通じる話で、遊びの環境づくりにも応用しています。
出典:32号・89号Q努力してもなかなか成果が出ないときは?
A「努力は直線、成長は曲線」という考え方があります。同じ動作を100回・100日繰り返した頃に、ようやく成長(ブレークスルー)が訪れるという経験則です。見通しが立たないまま努力を続けるのはつらいものですが、「あと少しで伸びるかもしれない」というグラフを示すことで、子どもは継続する力を得られます。
出典:40号Q結果」と「プロセス」、どちらを重視すべき?
A結果ばかりにとらわれると常に不安がつきまといます。一方、プロ野球選手やメジャーリーガーのエピソードにあるように、「今、ここ」のプロセスに集中できると、緊張がほぐれ本来の力を発揮できます。当園の教育目標「楽しい!うれしい!やってみたい!」も、結果よりプロセスを重視する内発的な意欲を大切にする考え方に基づいています。
出典:44号・64号・89号Q一流になるには才能と努力どちらが重要?
A『究極の鍛錬』で紹介される研究によれば、一流と二流を分けるのは才能そのものよりも「生涯練習時間」の量でした。一流になるにはおよそ1万時間、10年ほどの積み重ねが必要とされています。ただし近年は「外」からの厳しい指導に頼れなくなった分、子ども自身が自分のコーチになる「自律性」がこれまで以上に大切になっています。
出典:46号Q子どもの「攻撃性」はどう受け止めればいい?
A攻撃性は本来、生きるためのエネルギーであり、悪いことではありません。ヒーローごっこや王女様ごっこのような遊びを通して、秘めた攻撃性を上手に昇華できれば、それは「意欲」や「生きる力」として性格に統合されます。児童精神科医の故・佐々木正美先生も「本当に満足した子どもだけが意欲的になれる」と語っています。
出典:48号Q幼児期に「評価」を与えるとどうなる?
A幼稚園・保育園と学校の大きな違いは「評価」の有無です。あまりに早くから子どもを評価の世界に置くと、空想やファンタジーを膨らませる大切な時期が損なわれかねません。当園にディズニーなどのキャラクターを置かず、表情のあいまいなウォルドルフ人形を採用しているのも、子ども自身が自由に想像力を働かせられるようにという配慮です。
出典:52号Q人間関係の悩みを減らすには?
A心理学者アドラーの考え方によれば、悩みの多くは対人関係の中で「相手が期待通りの反応を返さないこと」への不安から生まれます。人の心はコントロールできないもの、と割り切り、自分が今何を思い、発言し、行動するかに集中する「自分軸」の生き方に切り替えることが、結果的に良い人間関係につながります。
出典:53号Q「人に教える」ことはなぜ学習効果が高い?
Aアメリカ国立訓練研究所の「ラーニングピラミッド」によれば、講義を受け身で聞くだけの定着率は5%ですが、「他人に教える」ことの定着率は90%に達するとされています。これは異年齢保育の理論的な裏付けの一つでもあります。年長児が年少児に教えることで、自らの理解がより深まっていくのです。
出典:55号